遮熱シート+通気同縁(通気層)の施工が完了した後に、いよいよ表題ともなっている『木摺+漆喰』の施工に移ります。木摺とは外壁の下地として、厚さ15mm
巾30mmの木を6mm間隔で柱に留め付けた外壁下地の名称です。厚さ15mm巾30mmの木が重要なのです!理由は後ほど…この木摺の上に直に漆喰を
塗りつけていくのが木摺漆喰と呼ばれています。
この木摺+漆喰がたとえ外壁下地といえど建物において重要な役割を担っていますので順を追って説明をしていきます。
弊社は木摺をパネル化し、自社工場で職人がひとつひとつ手作業で作っています。参考:木小舞パネル
最近の建物の外壁下地は、耐力壁の役割も兼ねる構造用合板(ベニヤ)をはじめ、それに準じた色々な下地・ボード材などが各メーカーから発売され使われ
ています。家づくりを検討されている方々は構造、工法や耐震性、断熱材などの質問や相談は良くされますが、こと外壁に関しては余り関心が無いように思え
ます。→合板(ベニヤ)の寿命
しかし、日本の風土のなか、建築を計画するうえで雨に直接触れる外壁(下地含)は、構造(耐震性)や温熱環境、耐久性を検討する上でも非常に重要な
部位になります。たとえ内壁に漆喰、珪藻土などの高性能な材料を使っても、断熱材を高価な商品を採用しても、この外壁の下地~仕上げまでを考慮しない
と全く意味のない無用の長物となってしまいます。
【透湿性・透湿抵抗値】
日本の風土の主な特徴は高湿度です。日本の建物は湿度対策から考える事で温熱環境が向上し、ランニングコスト/光熱費も下がり、耐久性なども増す事
につながります。室内にこもった湿気の通り道は…室内→壁内→外壁(通気層・下地・仕上)→屋外と総合的に考えます。通気層も除湿に対して重要な役割
を持っていますが、気温や気圧など環境に性能が左右されてしまう事がある為、完全とはいえません。次は下地を含めた建材・材料の性能比較を見てみましょう。
※透湿抵抗値:数値が大きいほど湿気を通さない。※上記表の漆喰とは瀬戸漆喰とは違い、本漆喰を表します。
因みにこの透湿抵抗値は断熱材の選定にも採用すべき数値です。詳しくはまたの機会に…
表を見て頂けるわかると思いますが、湘南地区では、合板+アスファルトフェルト+(ラス網)+モルタル塗+仕上…の組み合わせがもつとも多いですが、材自体の
数値を見ても木摺+漆喰に遠く及ばない事が分かります。例え合板下地を木摺に変えても、材自体の数値が漆喰と比べて劣っているので性能は落ちます。
実際は外壁仕上材が加算されてしまいますのでさらに数値は劣ります。表からみても、湿度調整を考える上では、壁は厚いだけでは意味がなく、材自体がもつ
特性や性能を見極める必要があるのです。最近よく街で見かける外壁の塗り替え工事「外壁10年保証塗料!」を宣伝文句でビニル、樹脂系塗料で塗り替えを
していますが、これらの塗料では調湿どころか、透湿性能もありません。人がビニール袋を被って生活している様なものです…ある側面だけ見て、安易に計画を
してしまうと家は極端に寿命を落とします!
木摺がなぜ厚さ15mm巾30mmなのか?板と板の隙間は6mmで設定されています。その隙間は漆喰が塗りこまれているので、透湿性能が木に邪魔される事は
ありません。巾が広い板で施工をされている方々を見かけますが、巾が広いだけだと隙間が少なくなり、透湿性能が劣るともいえますので注意が必要です。
それでは何故巾が広い板を使うのか?簡単です。理由無く使っている方は論外ですが、施工者側が手間をかけずに楽をしたいだけです…困ったものです…。
例えこの部位に少し手間がかかっても、決して理不尽にコストが上がる事はありません。覚えておいて下さい。
アスファルトフェルト+ラス網 湿気が逃げずらい!
木摺は杉の板で作られていますので、よく「木が腐らないのか?」とプロからも質問を受けますが、木が腐食する原因はただひとつ「腐朽菌」が原因なのです。
この木材腐朽菌の繁殖条件は、高温多湿の環境を好み、酸素を必要とし、栄養分は木材に含まれる成分なのです。それなので外壁下地とはいえ調湿性能をもつ
木摺+漆喰だからこそ、木を腐らせる事を防ぎ、建物自体の耐久性を保持しているとも言えます。ただし、間違ってはいけないのが漆喰は優れた調湿性能を持って
いますが、漆喰には防水性は無く、かえって吸い込みやすい素材であることがあげられます。ただ、水に溶けて流れてしまうことがないので、昔から土壁の上から
塗ることでそれが流れ出すことを止めることが出来ました。そこで漆喰であって別次元の性能を誇る漆喰が私も微力ながら開発や研究に携わっている《瀬戸漆喰》
なのです。簡単に説明をすると、古来から伝わる漆喰の性能にさらに「強度」と「防水性」を高めた材料が《瀬戸漆喰》なのです。→詳しくは木摺+漆喰②へ
大正天皇が主に使われた栃木県那須御用邸でも壁の下地に木摺が使われています。
御用邸は木摺の上に和紙が11層張られています。漆喰壁に見えますが和紙張なのです。
ご説明をさせて頂いた通り、昨今の外壁下地材は工業製品に頼る事がもっとも多い材のひとつで自然材料と比べても耐久性や通気性が劣ります。では何故、
未だに合板などに含まれる接着剤が起因して起こる低耐久性や健康被害に目を向けないのでしょうか?何故、世の中の建築士や建設会社のプロ達は未だに
工業製品を使用し続けるのでしょうか?それは、ハウスメーカーや建材メーカーは知識もなく、止める事もできないのです。製造している化学工業メーカーや
プレハブメーカーがつぶれるからです。さらに建築に携わっている専門家にも関わらず、知識に乏しく、簡単に早く安く、誰でも施工が出来る事だけを優先して
家づくりをしている人や業者が、皆様が考える以上に多いというのが今の日本の業界の現実なのです。全てとは言いません。しかし、考えられないくらい多いのが
現実です。街を歩いて建築現場を見てみて下さい…
一生に一回と言われるほどの家づくりです。30年で朽ち果ててしまい、欠点だらけの家に高いお金を出して住みたいですか?老後に朽ち果ててしまっては
楽隠居は出来ません。そうなったら皆さんならどうしますか?
◆ Y’sの家づくり【9】 木摺+漆喰の家 羊毛系断熱材
◆ Y’sの家づくり【8】 木摺+漆喰の家 木摺+漆喰②(高強度漆喰・瀬戸漆喰)
◆ Y’sの家づくり【8】 木摺+漆喰の家 木摺+漆喰①(高強度漆喰・瀬戸漆喰)
◆ Y’sの家づくり【7】 木摺+漆喰の家 遮熱外壁通気
◆ Y’sの家づくり【6】 木摺+漆喰の家 耐久性 ホウ酸
◆ Y’sの家づくり【5】 木摺+漆喰の家 耐震・制振ダンパー
◆ Y’sの家づくり【4】 木摺+漆喰の家 遮熱+二重野地(通気)
◆ Y’sの家づくり【3】 木摺+漆喰の家 上棟
◆ Y’sの家づくり【2】 木摺+漆喰の家 基礎
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