土こそ再生可能?本当の自然素材とは
日本は世界有数の地震国です。それなのになぜ伝統的に土壁が多く使われてきたのでしょうか? 地震後に土壁が崩落している建物の画像をTVで見かけ、皆さんは地震被害の大きさを感じていると思いますが、土壁は地震等の外力が加わった場合、壁は土壁が壊れることで外力を吸収しているのです。しかもこの崩落した土壁は、水を加える事によって再度、建材として壁として塗れるのです。再生可能な材料、これこそ歴史に培われた先人の知恵ですね。
日本建築においても数百年前から壁など使われている土ですが、日本では2003年の法改正で耐力壁の認定がされるまで、性能を実証できる実験データなどが無く、ほとんど認められていない状況でした。しかし、現在では法認定だけではなく、断熱や調湿や蓄熱、耐火性能など、近代の新建材でも模造できないほどの性能をもつ天然の素材が土なのです。
日本の風土の主な特徴は高湿度です。日本の建物は湿度対策から考える事で温熱環境が向上し、ランニングコスト/光熱費も下がり、耐久性なども増す事につながります。次は下地を含めた建材・材料の性能比較を見てみましょう。
下の表を見ると分かるように、湘南地区では合板+アスファルトフェルト+(ラス網)+モルタル塗+仕上げ…の組み合わせが最も多いのですが、材自体の数値を見ても透湿性能は、木摺+漆喰に遠く及ばない事が分かります。
近代の家は新建材のみで造られるケースがほとんどと言って良いほど多く見られます。建築時に自然素材の土を使うとコスト高になるのでは? と思われがちですが、決してそうではありません。素材自体の金額もさほど高くはありません。しかし、それを扱う知識や技術が必要です。土をはじめ、自然素材を正確に扱える専門業者が少ない事からそのような印象を与えているのかも知れません。
高度成長期以降の家つくりの担い手は『専門技術を要しない』『早く』『安く』の新建材や新工法をつくり続けてきてしまいました。市場もそれを求めていた時代だったのでしょう。そこには日本の風土や文化、環境を蔑ろにしてしまっただけでなく、人々の健康をも害してしまいました。
近年、これらの諸問題から土(自然素材)が取り上げられる事が多くなってきましたが、この数十年で建築に携わるプロですら、知識や技術が失われてしまったのも事実です。土も満足に扱えないで、名ばかりの漆喰や珪藻土の製品が多く市場に出回っているのも事実です。
本物の、本当の素材とは何か、今だからこそ作り手も住まい手も、今一度、先人の知恵に学び、考える時代なのかも知れません。
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