湘南・町屋の家
前回の①の外観に続き、今回は建物内部の使用について御説明致します。
土壁Style『湘南町家』①はコチラ⇒
室内の壁や天井などの仕様は、Y’sの真骨頂ともいえる土を存分に活かした仕様を随所に施しています。土壁・糊土仕上げ・版築・木摺漆喰など、土や材の性能を存分に活かせるプラン計画をしており、加えて特性に合う、工法と技を使います。
そもそも、土壁を御存知無い方も多いとは思いますが、皆さんがイメージを抱いている土壁とは、『ボロボロ落ちる?』『古い?和風の家?』など想像をしているかも知れません。そんなイメージが多い土壁ですが『ボロボロ落ちる?』と思われている材料は、今から40年以上前の建物に多く使われていた、繊維壁と言われる仕上げ材です。ここでは説明は割愛しますが、何と言うか、ビニールクロスの先祖と言うか、接着剤入りの樹脂、工業製品の始まりの様な材料なのです。
今では当たり前の様に多く使われている工業製品材でもありますが、誰でも、簡単に・早く・安く、使う事が出来る樹脂製品は、経年変化で紫外線劣化を起こすなどして、それこそ『ボロボロ落ちる』のです。それは現代の建材でも同じで、塩ビ製のドア製品、家具、ビニールクロスやベニヤ材をはじめ、雨樋なども劣化を起こすのが宿命な素材なのです。
Y’sの家づくりでは、一切、ベニヤや接着剤入りの樹脂、工業製品は使用しません!
名ばかりの自然素材の家が多いのです。ベニヤやクロスの上に樹脂入りの漆喰や樹脂入りしか存在しない珪藻土を塗り、自然素材の家と銘言っている業者や専門家の多い事・・・嘆かわしい・・・。それはそれほど時間も経たない間に劣化を起こし、メンテンスを行う羽目に・・・十数年で、壁や天井を莫大な金額と労力をかけて塗りなおしますか?それだけで無く、そもそも本物の材に見た目だけは似せていますが、中身は全くの別物なのです。製品カタログには、湿気を取る、メンテナンスが容易など宣伝文句はありますが、本当の土壁、漆喰と比べると全くの別物なのです。維持費に関わる性能だけでなく、もともと温熱性能に違いが有りすぎるのです。その様な違いを頭の片隅において頂き、ご覧に下さい。
高度成長期の住宅需要過多の時代には、簡単に早く安く作る事だけを考えていれば良い時代が確かに存在していました。熱い、寒い、お金が掛かる、住環境は最悪でも『住めれば良い』だけの粗悪な建物が多いのもこの時代の特徴です。それらの建物が数十年の時を経て、使われている材の悪性に気がついた時には、時遅・・・。本来、日本人が誇るべき日本文化の象徴でもある日本建築、家づくりが、技術の継承もあまり行われておらず、本来、専門家である建築士、職人達が経験も知識も無い人々が多数となってしまいました。そこに加えて、土や藁などの材の確保の点からも危ぶまれているのが現状です。
Y’sのつくる家は、カビや結露とは無縁!それには理由があるのです。
「大正モダン」的なイメージとのご希望でプランがスタートし、施工中の現場や完成見学会、イベントなどに何度も足を運んで頂き、色々な雑談と打合せを経て、当初のイメージ+土を取り入れた、まさにY’sの土壁Styleで計画が進み、無事に完成、引渡しをさせて頂きました。
夏障子・・・夏場は、夏仕様の『夏障子』。夏障子は虫除けの役割もするので網戸は不要。室内からは外の景色が障子越に望めますが、外から室内の様子は見えないのが特徴です。冬場は『冬障子』仕様の内障子に。最近はカーテン、ブラインドなどが一般的と言われていますが、冬障子の目的は、目隠しの為だけではありません。冬場に室内の湿気、温度と外気温の温度差で結露が発生しますが、カーテン類などとは違い、機密性にも優れている障子は、外部の窓ガラスと内障子の間に空間を作り、温度差を緩和します。それは障子に貼ってある障子紙も、余分な湿気を吸うなどして、湿度調整に重要な役割を果しています。最近は、障子紙が破れる事を嫌がり、樹脂製の障子紙もどきがあるそうですが、見た目は似ていても、それでは余計に結露が起きるのですが・・・これらの『夏障子』『冬障子』は、壁の中に収納出来る為、障子を仕舞えば全開口にもなり、季節により使用しない一方の障子は、その横に同じく収納を設け、次の季節を待ちます。
御家族の共有スペースであるLDKは、落ち着きのある土で仕上た壁と国産無垢材の厚板の床材、構造材で仕上げています。今回は、全ての家具類をY’sオリジナルで御注文を頂きましたので、空間の相性はバッチリです。壁で採用している土の壁は『糊土仕上げ』という名の仕上げです。一般的(Y’s的)には、土壁とは、同じ土を使う壁仕上げではありますが、見た目は似ていても性能や構造は別物の仕上です。簡単に説明をすると、土壁は、壁塗厚さが厚い壁。糊土は、壁の厚さではなく、塗り厚さが3㎜程度の薄い仕上げになります。しかし、糊土仕上げも土の性能が少なからず活かされますので、ビニールクロスなどの仕上材と比べると性能は天と地ほどの差があります。その性能故に、時期により余分の湿気を取ったり、拡散する事により、夏場は低湿度で涼しく、冬場には適度な湿度を保つ為、その温度と湿度の関係は、結露を防ぎ、カビの発生を抑えます。因みにY’sのつくる家の季節毎の適温は、夏場は『室温26度』、冬場は『室温19度』でも、湿度は夏でも冬でも50~55%を保つ為、夏は涼しく、冬は暖かかく感じます。皆様、エアコンなどの設定温度を夏場は18度、冬場は30度設定などにしていませんか?それでも夏は暑く、冬は寒く感じるのは湿度が関係しているのです。間違ってもメーカーや設計者、建設会社に珪藻土などの左官仕上げ材を勧められても使用しないで下さい。似てはいても全くの別物です。
参考:珪藻土の真実 コチラ⇒
土壁・・・・名の通り、土で出来た壁で、日本の四季が変わる気候風土に確実に適応が出来、日本建築には、住環境をを良好にすべく、性能的にも美観的にも欠かせない壁の作り方です。この土壁は、日本全国、その地方により造り方に違いがあります。そもそもその土地にある材料を使い、その土地に合った工法で作られる壁です。地方により、竹や葦などを下地(小舞)に使い土を塗る工法もあれば、木の板に直接、土を塗る工法もあります。Y’sでは杉材で木摺パネルを作り、そのパネルを建物に打ち付けてから、土を塗る『木摺土壁』で壁を造ります。この木摺パネルは、土壁の下地としての利用するだけでは無く、建物構造的にも優位に出来る様作られています。土壁=和風ではなく、Y’sの技を使えば、土壁もカジュアルにもモダンにも出来るのです。この建物は、施主様のたっての希望もあり、土壁ありきで建築計画がはじまりました。
『木摺土壁工法』 Y’sの土壁。東日本ではY’sだけの技です。
和室に多い「真壁」では無く、洋風にもカジュアルにも魅せられる「大壁」土壁。Y’sだけの技です。
参考:Y’sモデルハウス『土の家』と版築ヒーターを備えたキッチン
【Y’sで使う材 土】 知られざる土の特性コチラ⇒
版築・・・・版築とは、土を押し固めながら層を作っていく技法を言います。本来は基礎部分を強固にするために古代より用いられてきた技法です。作りたい部分に板などを用いて囲いを作り、そこに土や砂利を配合し、注ぎ込み、それぞれの層が決めた厚さになるように棒などで突き固め、圧縮しながら何層にも重ねていきます。全世界的に見られる伝統的な技法で、日本では三十三間堂や法隆寺の土塀が版築で作られています。現代では建築上の構造としては認められていませんが、その美しさから意匠デザインとして使われることが多い工法です。御要望により、土の性能を活かして、Y’sでは、美観だけでなく、ストーブの周りに防火と蓄熱の為に配置したり、版築の中にヒーターを設置し、輻射熱暖房としての利用を行う、Y’sオリジナルの『版築ヒーター』も御用意しています。これも私の知る限り、毎度の様に内装に採用しているのは、日本全国探せどY’sだけでは無いでしょうか?Y’sでは版築専門の職人をゼロから育て材料の吟味から、勿論施工まで、一環して版築施工をしています。
調色も可能ですが、土の風合いを活かす為、Y’sでは土の持つ風合いを活かす仕上げとしています。
法隆寺:版築の土塀
本来、家づくりは、住まい手が「どの様な住まい方をしたいのか」が重要なのです。家には屋根があり、床があり、壁と天井があります。その中でも壁は、家を構成する中でもっとも多い面積、数量になるのです。その大きい面積の壁をどの様につくるか?で家の性能が決まってしまうとも言えるほど重要な役割を占めます。
仕上げ材の選択が出来ないつくり手の手がけた家は結果が見えています。見た目も、間取りもコストを大事ですが、そもそも、仕様の選択が出来ない工務店・設計者は経験もなく、メーカーの既製品を使うしか出来ない方々ではないのでしょうか?それは如実に家に現れます。それは皆様が望んだ家でしょうか?
余り電化製品、機器などに頼らざる得ない家より、夏は涼しく、冬は暖かい家で快適にそして、光熱費を抑えた環境にも人にも優しい家で暮らしてみませんか?
土壁Style『湘南町家』①は⇒コチラ
今回は、壁の話で熱中し、オリジナルキッチンなどの話が出来ませんでした・・・次回は③として、Y’sオリジナルのキッチンや家具の話を御紹介をさせて頂きます。
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「Y’sで使う材」の記事は⇒コチラ
宜しければ⇒コチラのY’sの裏話もご覧下さい!
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