前回につづき、新しい試みとして、Y’sの完成物件を住宅建築に造詣の深いプロライターの方に、客観的な目線を交えて、論評をして頂く企画。
詳細の説明などは、Y’sにて補足をさせて頂きます。
今後も自社目線での解説や紹介だけでなく、住まい手の目線でラ解説をお楽しみ頂くつもりです。
筆者紹介
中村謙太郎 Facebook https://www.facebook.com/kentaro.nakamura.372
住宅を中心とした建築専門のフリーランス編集者。1992~2010年『住宅建築』、2010~2013年『チルチンびと』編集部に在籍。
中村謙太郎 まちなかで土壁の家をふやす会 事務局 コチラ⇒
前回 切妻屋根+下屋のシルエットが風景をつくる現代民家① 2-1 コチラ⇒
New case 切妻屋根+下屋のシルエットが風景をつくる現代民家② 2-2
一貫して民家研究と町並み保存に取り組んだ建築史家の伊藤ていじは「民家はその土地の文化の身分証明書のようなものだ」と語っていた。
ならば土地の気候風土を読み取り、できるだけ近くで手に入れられる自然素材を用い、なおかつ現代の暮らしへの配慮を欠かさないこの家こそ、
現代の民家と呼ぶにふさわしいではないか。
1階造り付けカウンターと家族の関係
玄関からリビングに入ると、すぐ脇に造り付けカウンターとオープンな棚が用意されている。パソコンを置き、左官職人である住まい手が事務作業に使うほか、家計簿をつけたり、時には子どもの勉強場所にもなったりする。多目的に使えるスペースなのだ。
こうした場所の存在は、単なる作業スペースという意味合いだけでなく、家族の気配を感じながら自分の時間を持つ場所があることを意味するのだ。
家族の時間と自分の時間。どちらも大事にしてくれるのが居心地良い家というものだ。
使い勝手は十人十色。Y’sでは都度、ご要望に合わせて設計、製作を行います
セミクローズドなキッチンのデザインとリビングの関係
この家のキッチンは、やや隠れたセミクローズドな形式。
この形式にしたのは、南側にパントリーを置いた配置も理由の一つが、何もかもがオープンで常にきれいにしなければならない対面式の窮屈さから解放されるためでもある。
そして重要なのは、既製のシステムキッチンではなく自社製作のフルオーダーであること。
フルオーダーだから仕様は住まい手の思い通りで、しかもコストパフォーマンスが優れている。
現在は棚の戸を付けていないが、必要に応じて後から付けることも可能。こうした柔軟な対応も自社製作ならでは。システムキッチンには真似できまい。
家の中の段差は重要。決してバリアフリーだから良い訳ではない。あえて段差をつくる事は、日本の住まいには必要。
住宅を楽しくする和室の役割
日本の住宅から和室が消えつつあるとの声も聞こえるが、いやいやどうして、多目的に使える和室の人気は根強いものがある。
客間としての利用はもちろん、ゴロンと昼寝もできるし、団らんのひと時には第二の居間としても使える。
Y’sでは和室の床を必ずリビングより15センチ高くするとのこと。それによってリビングにいる人とちょうど目線が合うのだ。
和室への上がり框の奥行をゆったりとっているのも、腰掛けに使えるようにとの配慮。
どこでも人の居場所になるという住宅の楽しさを実現するには、やはり和室の力が必要だ。
押入内の仕上げは『桐材』戸は『土佐和紙』庫内の湿気はありません
障子の温熱調整効果
サッシにはめられたガラスは、夏場の太陽熱が室内に入り込んだり冬場の室温が外に逃げたりする、いわば熱の出入り口である。
そこで、室内を快適にする手法として専門家が推奨するのが内窓の設置。
サッシの室内側に内窓を設けることで、サッシと内窓の間が緩衝地帯になって、日差しをやわらげる効果がある。
既製品として内窓も販売されているが、この家では日本古来の障子を活用。和室だけでなくリビングの南側開口部にも障子を入れている。
障子がスクリーンとなって、夏は強い日差しをやわらげ、冬はサッシとの間にできた空気層で室内が冷えるのを防ぐ。
機能を追求した結果、日本の伝統にたどり着くという、現代民家ならではの選択といえよう。
昨今の障子は工場製作が多い中、Y’sでは職人の手作業で障子をつくります。デザインは住まい手の好みで、、、
近隣と家族をつなげる濡れ縁
リビングおよび和室の室外側には雁行した木製の濡れ縁が設置されている。濡れ縁とは一般名称だが、この家は軒の出が深いので小雨程度であれば濡れずに済む。
リビング側の濡れ縁は道行く近隣の方々とのコミュニケーションの場となり、目隠しのためやや奥まった和室側の濡れ縁は物干しとしても使える。
木製の濡れ縁は雨風にさらされて傷みやすいのが悩みどころ。しかも板材の上からビスでとめると、ビス穴から雨水がしみ込んで、さらに寿命を縮めてしまう。
そこでY‘sでは下側からビスで根太とデッキ材をとめている。
いわば常識的な施工方法のはずだが、それができない工務店が何と多い事か。
Y’sでは、ウッドデッキとは呼びません。『濡れ縁』、、、その名称にも古からの意味があるのです
暮らし方に選択の余地を残す
昨今の住宅は、子どもが小さいうちから子ども部屋を与えるのではなく、将来子ども部屋に使えるフリースペースを確保しておき、成長に合わせて間仕切り壁を新設するケースが多い。
この家も、2階には主寝室、クローゼット、収納、トイレとともに、広くとったフリースペースが用意されている。
こうすれば、親子そろって主寝室に寝ることもできるし、フリースペースに寝ることもできる。
家が暮らし方を全て規定するのではなく、選択の余地を残しておくことで、家族と一緒に成長する。これも家づくりの醍醐味だ。
お子様の成長や家族構成の変化に対応できる間取りが重要。現在は多目的に使用し、後に簡単に2分割に出来る構造が大事。
収納の適材適所
家の新築に当たって誰もが気になるのが収納の問題。収納を上手につくることが家をきれいに保つことにつながるし、日々の暮らしをスムーズにもする。
その点、この家はよく考えられており、1,2階とも場所と用途に合わせた収納が用意されている。
まず1階は、玄関脇に靴箱、勝手口とつながるパントリー、そして和室用の押入れ。そしてキッチンと、パントリーと壁をはさんで反対側のリビングに面した位置には棚が用意されている。
2階は主寝室に附属したクローゼット、階段脇には多目的の収納がある。
スタイルの違う収納を複数用意すれば、年間を通して頻繁に出し入れするものと、季節の変わり目に出し入れするものを別々にしまうことができる。
収納も適材適所が肝心なのだ。
廊下(後に)と並行に配置する多目的収納。動線を阻害せず、効率的な配置が望ましい。
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